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SARASVATI
三宅千鶴のオリジナル小説ブログ 

第2章-4

「――寂しかったんだ」
 貴大がボソリと呟く。

「――えっ?」
 当麻は聞こえなかったように貴大の顔を見つめた。
「寂しかったんだって、言ったんだ」
 貴大は完全にフテ腐れて吐き捨てる。

(寂しかったって、今、この人、言った………?)
 弱みを見せたがらない貴大の本音の声を聞いて、当麻は我が耳を疑った。マジマジと見つめられる気恥ずかしさに耐えかねて、貴大は早口でまくし立てた。

「仕事してれば気も紛れるし、現場のことも今の内におおよそ掴んでおいたら、4月から残業せずに済むかなと思ったんだ」
「じゃあ」
 当麻は眼を丸くしたまま問いかける。

「どうして電話に出てくれなかったんですか?」
「電話を切った後が嫌なんだ」
 貴大は苦虫を噛むように、
「切った後、おまえがいないことを痛感する。それを思い知るくらいなら、いっそ電話なんてもんで話さない方がいい」

 極端な理屈だが、貴大の中では筋が通った理由なのだ。
 そもそもが大の電話嫌いなのだから、毎晩その電話に出ろと言うのが酷だったのかもしれない。
 それよりも何よりも、貴大の「寂しかった」が耳にこだましてやまない。

(佐野さん、俺がいなくて寂しいって本気で思ってくれてたの?)
 当麻の心に怒りよりも熱量の高い感情が湧いてきて、どうしようもなくなっていく。

「このランクル、どうしたんだ?」
 話は済んだと思ったのか、貴大は新車の匂いも香しいラグジュアリーなコックピットを見回していた。
「買ったんです。東京に戻ったついでに」
「か、買った!?こんな高い車をか!?」
 貴大は眼を剥いて叫ぶ。

「しかもおまえ、東京にポルシェ持ってたよな!?」
「ポルシェは祖母の所有車です。こっちに来たら自分の車がいるでしょ?」
 説明をくれながら、当麻はスーツの上着を脱いで後部座席へと投げ捨てた。

「まぁ、それはそうだけど」
 彼が何をしようとしているのかわからないまま、貴大はつい、車の計器類に眼を走らせてしまう。
「カッコいいな。なんでランクルにしたんだ?」
「あなたが以前、好きな車だと言っていたからですよ」
 ガタッ!と言う音とともに、貴大の座る助手席のシートがいきなりリクライニングして後ろに倒された。

「うわっ!」
 驚いている間もなく、上から当麻がのしかかってくる。
「何するんだ!?」
「黙って」
 当麻は貴大の耳元に口を寄せて囁いた。

「ずっと、あなたを抱きしめたかったんです」
 背中と腰に両腕が回され、かたく、きつく、貴大の身体を抱きしめてくる。

(――当麻………)
 貴大もおずおずと、両腕を当麻の広い背中に回した。この温もりと、彼の香りをどれだけ恋しく求めていたのか、直に感じて胸が熱くなる。
(愛おしい……)

「愛してます」
 当麻の唇が貴大のそれを求めてきた。
「あ……んっ……」
 口唇を重ね合い、やがて熱くて柔らかい当麻の舌がゆっくりと口腔に忍び入ってくる。ためらうことなく、互いの舌と舌を絡ませ、きつく吸い上げる。

「んっ……ふぅ……っ」
 その間にも、当麻の手は貴大からスーツの上着を剥ぎ、ネクタイを緩め、Yシャツのボタンを外していく。
「くっ……んっ!」
 ディープな口づけに囚われたまま、貴大の身体がビクンッと跳ね上がる。当麻の長い指先が貴大の赤く色づいた胸の飾りを探り当てていた。爪の先で尖った先端を捏ね回されると、痛みと快感で呼吸が上がってくる。

「はっ……あっ……と……うま……ッ」
「佐野さん、ほんとにここ、イジメられるの好きだよね」
 互いの唾液に塗れた口唇を外すと、当麻はひっそりとサディスティックな微笑を洩らす。
「こっちも、イジメられたら悦ぶけど」
 貴大のズボンのベルトを外すと、下着ごと一気に剥ぎ取ってしまう。
「は……っうっ!」

 丸裸に向かれた下肢が恥ずかしさに揺れ動こうとするが、開脚させられた両足の間に当麻の下半身があるので身動きができない。さらに、先まで乳首を苛んでいた右手が下肢へと伸び、股間で息づく貴大自身を扱き上げ始めていた。


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