fc2ブログ

SARASVATI
三宅千鶴のオリジナル小説ブログ 

第8章-8

「佐野さん、中原さんを連れて逃げて!」
 織部の背に隠れて当麻が叫ぶ。
「ダメだ!おまえを置いていけないッ!!」
 貴大は祥希を庇いながら大声で叫び返す。

「俺はいいから早く逃げてッ!!」
 言い合う間にも、織部は当麻が羽交い絞めする両腕を凄まじい力で払い退けた。
「邪魔立てするなッ!!」
 そして振り返りざま、当麻めがけて刃を振り下ろそうとする。

「当麻ッ!!」
 貴大は無意識の内に背中に手を回しGパンに差し込んでいた独鈷杵を掴み取った。
「やめろーっッ!!」
 無我夢中のまま駆け出し、手にした独鈷杵を織部の背中めがけて全身の力でもって突き入れていた。

 骨肉を断つ鈍い手応えを感じたと同時、
「ぐわぁーーツッ!!」
 織部が天を向いて叫ぶ。

「ふっ……うぅッ……ッ」
 ドクッ……ドクッ……ツッ!!と、貴大の心臓で脈打つ鼓動が胸郭を突き破りそうに高鳴る。
「おま……え……っ」
 織部の胸部にまで突き入った独鈷杵を両手で掴み持ち、意識の半分が吹っ飛んでいるにもかかわらず、貴大は不自然なほど冷静な声で言った。

『俺の男に手を出すな』

 白い長衣を身に纏う女性の姿がその時、貴大とだぶって見えていた。だが、それに気づいた者はいない。
 何故ならばその時、独鈷杵も貴大も織部でさえ、織部の内面から噴出してきた黄金の光で輝き染まっていたからだ。

(―――なにっ!?)
 貴大の身体が瘧のように震え出す。
 電流の痛みを感じたように独鈷杵から両手を離すと、そのまま後ろの地面に倒れ込んだ。

「佐野さんッ!!」
 背から黄金の光を噴出させる織部の身体を回り込み、当麻が貴大の元へと駆け寄ってくる。貴大がそれを眼にして叫ぶ。
「当麻ッ!!」
「貴大ッ!!」

 二人がヒシっと抱き合った刹那、
「ぐおおーつつっッ!!!」
 大型獣のような咆哮を上げて織部の身体が前方へと倒れ込んでいく。

 背中から吹き上がる黄金の光が宙に留まり、やがてそれは人の形を成して浮き現れてくる。
 光り輝くほどに美しい女の姿に。

(―――えっ!?)
 貴大と当麻は眼を瞠ってその光景を見た。

 艶やかなりし金糸の織衣を身に着けた、この世のものに非ざるほど臈長けた金髪碧眼の美女。
 そして、彼女の隣に立つ、真っ黒のベールを被って黒い長衣に身を包む同じ背格好の女。

 吉祥天女と黒闇天女。対の姉妹の姿だ。

(マジか―――っ!?)
 茫然として見つめる二人の前で、吉祥天女はその光輝く美しい右腕を倒れたまま気を失っている祥希の方へ向けた。

『勇気ある若者に祝福あれ』
 凛として優美なる声音が胸に響き聞こえてきた。
 と同時、女神から放たれた金色の光の束が闇を貫いて祥希に届く。一瞬、祥希の身体が黄金の光に染まった。

『真の愛を貫く者らに祝福あれ』
 そして次、吉祥天女は当麻と貴大にもその光の束を放ってきた。
 拒む術もなかった。が、光を感じた瞬間、身体の中から不思議な力が湧いてくるのを二人は体感した。

(なんだ……これ………?)
 見上げると、当麻も貴大と同じように眼を瞬かせている。
 さらに当麻は、己の両手で胸の辺りを探っていた。おそらく、重傷を負っていた肺の辺りが完全に回復したことを実感していたのだろう。

(これが……吉祥天女の力なのか………)
 貴大が唖然と考えている間に、昏き闇の向こうからハザウェイが黒豹めいた足取りで姿を現した。
「終わったようだな」
(ハザウェイ………?)

 驚いたことに、吉祥天女と黒闇天女は彼の姿を認めると、二人揃って膝を折り丁寧にお辞儀した。まるで、王に謁見する貴婦人らのように。

「行きなさい。毘沙門天が焦れて迎えを寄こしてきた」
 ハザウェイは彼女らに向かって大きく頷くと、北の天空を指さした。

(え………っ?)
 貴大も釣られて見上げると、そこには北の宇宙へとつながる長いトンネルのような光の道が延びていた。

『では兄者、おさらばえ』
 鈴を震わすような妙なる声音を夜風に乗せて、姉妹の天女らは並んでその光の道へと進む。
 そうしてその姿は渦巻く光の粒子とともに夜の闇の中に消えていった。

(なんなんだ………これ………?)
 眼にしたものが信じられず愕然とした時、貴大は突如として意識を失った。
 いや、意識を奪われた。きっとその時、ハザウェイを除く全員が彼によって眠らされていたのだろう。

 何故ならば、
(謎解きは、次に眼が覚めた後だ)
 そう呟くハザウェイの声が、遠い世界から耳に届いていたからだ。


  次へ


スポンサーサイト



Comment

こんばんは(^^)/
いやいや~、第8章7話目を拝読するのが少し遅れて、クライマックス!という修羅場?で続くだったけれど、あ、もう8話目もアップされている~、良かった~、すぐ続きが読めるわ、と思ってクリックしたら……真っ白のページで大ショック。翌日、アップされていたのを見つけたのですぐに食いつきました(^^)

ひとまず、ここまでは話の展開がとんとんと来たので、やっと読んでいる私もひと息つけたので、コメントに来ました。
ラブラブな彼らのことはちょっと置いといて(え?)、この姉妹というのか、裏表の力を持つ神的存在という設定、すごく好みです。しかも最後は、なんとハザウェイに跪く? ハザウェイ、何者? 兄者? わ~もう、謎解きが楽しみです。
でも、3人は無事として、織部は~? 
あれこれ、ひとりで騒ぎながら拝読しておりました。でも、どうやら、愛の力は闇の力に打ち勝った?のかしら。いえ、この二律背反の姉妹、どちらが欠けても成立しないのですよね。シシ神のだいだらぼっちみたいに。

で、ラブラブな二人は置いといて(また置いとく)、意外にも骨太な強さを見せたのは祥希くんでしたね。華奢だけれど、精神はかなり強そう。でも、こんな事件?がなかったら離れたまま接近できなかった祥希と織部のカップルが何とも切なくて、うまく乗り越えてくれそうだけれど、織部~? 生きてる~??(千鶴さんはそんなご無体なことはされないと信じていますが)
黒闇天女は去って行ったものの、そもそも織部の心に方にも隙というのか、弱さがあったので、そこに住み着いたわけですよね。完全に去っていくことなく、何か火種のようなものが残っていたりするのかなぁ。それとも、黒闇天女の方も、満たされて彼女?自身の問題も解決したのでしょうか。でもそうなったら黒闇天女の存在意義もなくなるし。
謎解き待ちですね。
ひとまずは、ラブラブな二人は置いときましょう!(やきもきさせといて、結局、単にラブラブじゃん、ってやつですね!)
千鶴さんの創作パワーがみなぎった展開、楽しませて頂きました。
2021.09.26 21:54 | URL | 大海彩洋 #nLQskDKw [edit]
ありがとうございます(*^^*)
いらっしゃいませ、彩洋さん♪

いつもお忙しいなか、拙作を読みにお運びくださりありがとうございます。そしていつも嬉しいコメントを残してくださり、本当に感謝です。ありがとうございます!!

大詰めを迎えましたこのお話も、残すところは謎解きの一章のみとなりました。ラブラブ二人はとくに謎もないわけなので脇に置いとくとして(笑)、織部と祥希がどんな結末となるのか、見届けていただけたら嬉しいです。なんせこのお話は2人のラストを描きたいがために書き進めてきたわけですから(^_^;)
他の謎解きも含めて最後まで楽しんでいただけたら望外の喜びです。ただ、この結末でよかったのかは、書き終えた今も悩むところではありますが(^_^;)

あと、吉祥天女と黒闇天女の対の女神に着目してくださってすごく嬉しく思いました(o^^o)
この魅力的な女神らの存在を知らなければこのお話だけでなく、前作を書くこともなかっただろうことを思うと、物書きにとって閃きの重要性は大きいですよね。

書き手にとって意外だったのはハザウェイの存在。彼は元々こんなに出しゃばるはずじゃなかったのに(笑)だいたいお察しかと思いますが、彼は別作品の主人公なんですよ(^^;;
なんでここではあまり彼について言及しないことになります。ただの変なおじさん、って括りでご容赦いただけたらありがたいかもです💦💦

最後の最後でほたり投げられたラブラブ二人は、まぁいいかな(笑)
うまく謎解き係ができるかどうか、ご期待していただけたらと思います。

また彩洋さんのサイトにもご訪問させていただきますね。
本当にいつも温かいお言葉をかけてくださりありがとうございます(*^^*)♫
2021.09.27 20:41 | URL | 三宅千鶴 #- [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://sarasvati18.blog65.fc2.com/tb.php/1344-9fee5248